love you

「ちょっと相談なんだけどさ」
 『定食どっちにする?』みたいな軽い口調で伊作が言うので、文次郎は何気なくうん、と返事をした。
「騎乗位ってどうやるの?」
 ぶっ!
「うわ、汚いなあお前」
「お、おま・・・お前がおかしなことを言うからだろうが!」
 バカタレ、と罵倒しそうな勢いで文次郎は茶を勢いよく吹いてしまった口元を拭った。
「あーあ、そのお茶、結構いいやつなのに」
 口を小さく尖らせながら伊作は空になった文次郎の湯飲みを掴んだ。
「茶はどうでもいいだろうが」
 真昼間からする話題ではない。酒の席でほろ酔い加減でする猥談とは違うのだ。太陽がまだ高い昼間の、文次郎と伊作二人だけの伊作の自室である。
「だって、真剣に知りたいんだもの」
 伊作は同い年にしてはどこか無垢な笑顔で新しく淹れた茶を文次郎に差し出した。
「授業で習っただろう」
 それを受け取り、口元で冷ましながら一口飲む。さすがにいい茶だと言うだけあって美味しい。
「教科書では習ったけど、実践では上手くいかないんだ」
 己の技術の未熟さの部分を、伊作はさらりと言ってのける。
 素面で友人と性について話しているというある種の気恥ずかしさを感じている文次郎の方がおかしな気分になった。
 伊作はどうやら真剣に、純粋に疑問を投げかけているらしい。そうなると照れている文次郎の方が何やら後ろめたい気分になってくる。
「・・・何が上手くいかないんだよ」
 文次郎はまた一口、茶で喉を潤すとそう切り出した。
「君なら相談に乗ってくれると思ったよ」
 伊作はにっこりと言った。
 どういう意味だよ。心の中で呟いた言葉は口には載せず、文次郎は伊作の次の言葉を待つ。
「あのね、すぐに抜けちゃうんだ」
 文次郎は絶句した
 いくら相談事とは言え、ここまで赤裸々に語られてしまうと友人の性行為を垣間見たようでどこかばつが悪い。
 しかし見つめてくる伊作の瞳はまっすぐで、文次郎は姿勢を正すととことん彼に付き合ってやる覚悟をした。
「いっつもどんな風にしてんだよ」
「え?えーっと・・・こんな感じかなあ」
 よいしょ、と伊作はその場に横になり、己の腰の上で自分の上に乗る誰かの腰を掴む仕草をしてみせ、ゆっくり腰を揺らした。
 どこからどう見ても間抜けなその姿を、それでも伊作は真剣である。
「―・・・よく分からん」
 文次郎はそう言うと、伊作の上に跨って尻を伊作の股間につけた。
「ほれ、これでやってみろ」
「・・・君が上?」
「煩い。教えろと言ったのはお前だろう」
「はーい」
 伊作は文次郎の腰を掴み、文次郎は伊作の体幹を挟むように手をついて体を落ち着けた。
「俺は動かないからな。普段やってるみたいに動かしてみろ」
「うん」
 伊作はゆっくりと腰を打ち付けてくる。文次郎の尻に自然と伊作のモノが触れる。どうにもおかしな気分だ。
「お前、ちょっと大きく動かしすぎじゃないか?」
「え、そうなの?」
「もっと、上下じゃなくて前後に」
「んー・・・こんな感じ・・・?」
 文次郎の腰を掴んだまま伊作は前後に動かそうとするがどうにも上手くいかない。真剣な伊作の表情に反して文次郎の尻に当たる伊作自身は少し硬さを増している。
「おい、伊作」
 文次郎が上から睨んでくるので伊作はふと我に帰ってへにゃりと笑った。
「悪い悪い、ちょうどいい感じに当たるもんだからさ」
 へへ、と笑った伊作の上から尻を離し、今度は文次郎が横になった。
「どうも上手くいかん。おい、お前が乗れ」
「そうだね、その方がいいかも」
 伊作は肘で体を起こし、ゆっくりと文次郎の上を跨いだ。
 四年生で閨の授業を受けて以来、友人の誘いなどもあってそちらの遊びを覚えた文次郎だが、男を、しかも友人を上に乗せるというのは初めてである。
「よいしょ」
 伊作は文次郎の上に尻を落ち着けると涼しい顔でよろしく、と言った。
 文次郎はその伊作の腰を掴む。
 この万年不運委員の友人は、体格に見合った顔というか、顔に見合った体格と言うか、俗に言う女顔で体つきは細い。仙蔵などに比べればがっしりしている方ではあるが、それでも一般的な六年生の忍たまにしては細い方だ。
 そんな彼がどんな顔で女を抱いているのだろう。
「文次郎?」
 動かない文次郎を不振に思ったのか、声を掛けてきた伊作に文次郎ははっと目線を挙げた。
「いや、すまん」
「どうしたのさ」
「別に」
「どうせ細いな、とか思ったんだろう。余計なお世話だよ」
 分かってるじゃねえか、その言葉は飲み込んで文次郎はゆっくり腰を動かした。
「こうやって、前後にな」
 伊作の腰を掴み、文次郎を跨いでいる足の間の、その部分に己自身を押し付ける。
「ちょっと動いてみろよ」
「うん。・・・こう、かな」
 伊作は文次郎の腹の脇に手をつき尻をゆっくり前後に動かした。文次郎も伊作の動きに合わせ、自身を密着させたままで腰を動かす。
「こうやって、相手に合わせりゃそうそう抜けるこたない」
「ちょっとさ、ゆっくりすぎない?」
「そうだな。もっと早く動かしてみろよ」
 文次郎に言われ、伊作は尻の動作を早くした。文次郎もそれに合わせる。
 ああ、確かに上手い具合に当たる。
 伊作はコツを掴んだのか、文次郎の動きに合わせながらも上下の動きをし始める。
「これくらい、大丈夫かな」
「・・・あ、そうだな」
 伊作の柔らかい尻に刺激され、徐々に文次郎の股間のものは硬度を持ってきた。
 やばい。
「もういいだろ」
 文次郎はぐいっと掴んでいた伊作の腰を離し、己の上から退けようとした。
「え、折角コツがつかめてきたから、もうちょっと」
 伊作は腰に力を入れてそれを拒む。
「もう充分だ、あとは実際にやってみればいい」
「・・・じゃあ、付き合ってよ」
「はあ!?」
 思わず大声を挙げてしまった文次郎を、上から伊作は拗ねたような顔で見つめてくる。
「実際にやらせてよ、って言ってんの」
「どういう意味だ」
「僕が女役でいいから」
「意味が分からん」
「抱いてくれって言ってるんだよ」
「ば・・・バカタレ!友達相手にそんな気になるか!」
 今度こそ、委員会などでよく発する叱咤の声を挙げた文次郎に、委員会の後輩のように縮こまることのない伊作は続けた。
「そう?結構元気になってるように思うけど」
 伊作は意地悪く文次郎のモノに密着させた尻を揺らす。
「やめんか!」
 ついに文次郎は全身を使って伊作の体を押し退け、その勢いで伊作は傍らに尻餅をつく。
「何を考えてるんだ、お前は」
「いいじゃないか、別に減るもんじゃないし」
「冗談でも止めろ」
 半分呆れながらそこに置いてあった茶を飲み干す文次郎に、伊作は彼に聞こえないくらいの小さな声で呟く。
「僕は本気だったのに」














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